初学者のための生命科学論文の読み方1 論文とは?篇

あなたは栄えて研究室に配属されました.
すると教授(先輩)から,

「これ読んどいて,」

と渡される英語論文…….

「来週発表だからね」(えっ)





論文にはたくさんの種類がありますが,僕は生命科学系の人間なので,専ら生命科学系(医科学,生物学,薬学とか)の論文について説明します.しかし,工学系であっても化学系であっても根本の部分はあまり変わらないと思うので,とりあえず読んでみてください.

論文とは?

論文とは,あるテーマに沿って論理的に書かれた文章のこと.生命科学論文は,世の中に文字通り星の数ほどありますが,大部分の論文は次の2つに分けることができます.

原著論文 (Original article):

ある実験をして,これこれこういう結果でした,ということを広く報告するための論文.グラフとか表が載っている.
実験をしていて行き詰まったとき,他の人はどういうふうに実験しているのか,こういうことを示したいんだけれども,具体的にどんな実験をすれば良いのか,といったことを知りたいときに読む.

総説論文 (Review):

あるテーマについて書かれたまとめ論文.執筆時点で,どのようなことが解っていて,どのようなことが解っていないのか,この研究はどこまで進んでいるのかが載っている.字が多い.データよりもイラスト(漫画)が多い.
(挿絵イラストとかシグナリングの図を「漫画」っていう先生まだいるよね)
そのテーマについて勉強しなくてはならないときや,研究のネタ探し(まだ報告されていないことは何か)に読む.

この他にも医学系には症例報告などもあるみたいだけれども省略.

Natureでも見てみましょうか.

Nature は総合科学雑誌なので,論文以外にも科学ニュースや社説?はたまたま投書までで載っていますが,リンク先はRESEARCHで,

NEWS & VIEWS
REVIEWS
ARTICLES
LETTERS

の4項目に分かれています.これらのうち,REVIEWS が総説論文で,ARTICLES と LETTERS が原著論文に相当します.(CORRIGENDUM, ERRATUM は誤植,正誤のこと)

「イギリスの科学雑誌 Nature に掲載されました」といったら,大概はARTICLES か LETTERS ですね.(理研の彼女のも)


さて,あなたが渡された論文はデータがいっぱい載っていたので「原著論文」.そして,これを発表しろというのは,著者が発見した現象をわかりやすくみんなに説明しろ,ということ.

改めて論文を見てみると,

Journal of Gastroenterology (2014) 49: 1065.
Ono, M., Ogasawara, M., Hirose, A. et al.

(Natureなら知ってるから,Natureにしてくれればいいのに……)

初めて論文を読む人に Nature の原著論文を渡してはいけません.総説はいいけど.というのも,Nature の原著論文は質が高いものの,実験の原理が複雑であることが多く,特に初学者は,ほとんどやったことのない実験を理解する前に挫折してしまうからです.(註:個人もとい昔の私の感想です.)しかも英語だし.それでは,初学者でもとっつきやすい論文とはどのようなものでしょうか.

論文難易度の目安

それはやはりインパクトファクター (Impact Factor, IF) です.インパクトファクターで雑誌を評価することに対しては賛否両論ありますし,雑誌の評価指数であるインパクトファクターを,掲載されている論文の評価に用いて良いのかなど,いろいろ議論はありますが,いろいろ論文を見てきた(読んだとは言っていない)傾向として,やはりインパクトファクターが高い雑誌に掲載されている論文は,実験構成に抜かりがないことが多く,多方面から実証を行っているという印象を受ける.すなわち,データ量が多い

生命科学系おなじみの Cell, Nature はデータが基本は多いね.PNASはページ数の制限があるからインパクトファクターの割にデータはスッキリしている印象.

では,インパクトファクターが低い論文を選べば良いのか.否.

世の中には,読む価値のない論文なんて腐るほどある.読んでも何も得るものがない.するとその論文は引用されなくなる.すなわち,そんなカスみたいなのが寄せ集まった雑誌のインパクトファクターは目も当てられない値である,そのため,あまりに低すぎる雑誌からは,注意して論文を選ばなくてはならない

もちろん,インパクトファクターだけで論文や雑誌の価値が決まるのではなく,インパクトファクターが低い雑誌に掲載されていても素晴らしい論文(僕が書いたのとか)はたくさん存在するし,逆に,高インパクトファクターの雑誌でもショボい論文が掲載されていることもある.ここで言いたいのは,そういう傾向があるということであり,数字の大小で論文の価値がきまるということではない

ちなみに,僕が Journal Club とかで選ぶ論文を選ぶときには,インパクトファクターが 5〜10 程度になるようにしている.(データ量も程よく,実験の意義も明確なことが多い.)

インパクトファクターは Google ででも検索できるほか,ジャーナルのトップページに掲載されていることもある.

今回渡された Journal of Gastroenterology は 4.4
(ちなみに,国内機関が発行する雑誌としては著しく高い)

ちょうどいいんじゃないかな,
ということで,次回から中身を見てゆきます.

続く……



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